クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

グリーグ:チェロ・ソナタ イ短調, Op.36

(Cello)レナード・ローズ:(P)レオニード・ハンブロ 1952年6月11日&18日録音





Grieg:Cello Sonata in A minor, Op.36 [1.Allegro agitato]

Grieg:Cello Sonata in A minor, Op.36 [2.Andante molto tranquillo]

Grieg:Cello Sonata in A minor, Op.36 [3.Allegro]


兄に捧げたチェロ・ソナタ

グリーグの兄であるヨーンは幼い頃からチェロを愛好していて、ゲヴァントハウス管弦楽団の首席奏者だったユリウス・クレンゲルから手ほどきを受けていました。その腕前はかなりのものだったようで、グリーグとも良く今日したりもしたのですが、結局は音楽の道には進まずにアマチュア演奏家として活動を続けることになりました。
二人の兄弟仲はとても良かったようで、グリーグが若い頃に兄のためにチェロの小品を作曲してプレゼントをしています。

そして、グリーグがピアノ協奏曲で大成功をおさめ一流の作曲家として認められるようになると、今度は兄のために本格的なチェロのための作品を作曲することを思い立ちます。そうして完成したのがこのチェロ・ソナタです。

この作品は全体として北欧らしい清冽な印象を持っています。
つまりは、グリーグがチェロ・ソナタを書いたならばおそらくこんな雰囲気になるだろうという期待に見事に応えてくれているのです。

冒頭のピアノの前奏に続いて歌い出すチェロの旋律はまさに北欧そのものです。そのしみじみとした叙情は聞くものの心にしみ入ってきます。しかし、それが展開部に入ってくると構造はかなり複雑なものとなり、ただの美しい旋律だけの音楽ではないことを思い知らされます。ついでながら、この第1楽章の最後の部分のピアノ・パートはあの有名な協奏曲の結尾部分と非常に似通っています。

続く第2楽章は二つの主題が対比されて自由に展開していくのですが、ここもまた北欧的な叙情性が魅力的です。そして、最終楽章はチェロによる助奏つきのソナタ形式と言うべき音楽で、叙情だけではない堂々たる佇まいを見せて曲を閉じます。

なお、グリーグは、この作品の初演の5日後に兄の師であったユリウス・クレンゲルと共演しています。
5日程度ならば、クレンゲルとの共演を「初演」にしろよと言いたくなるのですが、何か事情でもあったのでしょうか。


作品の核心に迫っていく完璧なプロポーション


「レナード・ローズ」は基本的にはオーケストラ・プレーヤーでした。それ故に、ソリストとしての「レナード・ローズ」の知名度は高くはありません。
しかし、オーケストラ・プレーヤーと言っても、その経歴を見ればただ者ではないことはすぐに分かります。

彼は20歳にしてトスカニーニから招かれてNBC交響楽団の首席チェリストに就任し、その翌年にはアルトゥール・ロジンスキからの招きでクリーブランド管に移籍しています。そして、このロジンスキーとの結びつきは長く続いて、彼が1943年にニューヨーク・フィルの首席指揮者に移籍した時にはローズもまたニューヨークに移籍をしました。

トスカニーニからロジンスキーというラインで評価されたのですから、それが何を意味しているのかは多くの人にとってはすぐに理解できるでしょう。
そして、1951年にソリストに転向した後にはセル&クリーブランド管との共演も数多くこなしているのですから、そりゃ、ただ者じゃないですよね。

しかしながら、彼はソリストに転向してからも、多くの人から賞賛され脚光を浴びることにはあまり興味はなく、どちらかと言えば多くの弟子を育てる教育活動に熱心でした。(ヨーヨー・マは彼の弟子です)
演奏会のある日であっても5時間の練習は欠かさなかったと言われている彼の信念は、今も多くの弟子に引き継がれているようです。

そんなローズの信念は「まずは練習、そして練習」でした。その点ではハイフェッツなどと同じライン上の存在かもしれません。
彼は「実演における霊感」などと言うものは一切信用しなかったようで、練習によって築き上げた完璧なプロポーションをこそ大切にした演奏家でした。おそらく、オーケストラ・プレーヤとしての長い経歴の中で、ひとりよがりの「霊感」に自己満足しているソリストの姿にウンザリしていたのでしょう。
それ故に、アメリカでは彼への評価は今でも高いようで「完全無欠のテクニックに恵まれたスケールの大きい名人」と言われているようです。

派手さはなくても、作品の核心に迫っていく完璧なプロポーションは、こののソナタでも揺らぐことはありません。
あまり聞く機会の多くない作品ですから、ファースト・コンタクトとしてこれほど相応しい演奏はないでしょう。

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