ラフマニノフ:交響曲第3番
クーセヴィツキー指揮 ボストン交響楽団 1945年録音
Rachmaninov:交響曲第3番「第1楽章」
Rachmaninov:交響曲第3番「第2楽章」
Rachmaninov:交響曲第3番「第3楽章」
資料が乏しい!!
今回この作品をアップしようと言うことであれこれ調べてみたのですが、あきれるほど資料が少ないので驚いています。ラフマニノフといえば基本的にはピアノの人と言うことで交響曲はそれほど注目されていないと言うことが一つ、さらに交響曲といえば2番だけがトレンディドラマとの関連で有名になり、1番と3番は眼中にないということがもう一つ、さらに言えば1番は初演の大失敗というエピソードがラフマニノフを語るときには欠かせないものであり、その関わりでふれられることはあっても3番となるとそういう話題もないということ・・・等々があげられるのでしょうか?
ラフマニノフの作曲家としての活動は基本的にはロシア革命による亡命によって終わっているといっても言いすぎではありません。(言い過ぎかな・・・^^;)
ピアノ協奏曲第2番の成功で自信を回復したラフマニノフはその後順調に作曲活動を展開していきます。ところが、16年に練習曲集「音の絵」を完成させた後はパッタリと筆が止まってしまっています。いかに没落貴族の息子であったとは言え、ロシアにおいては生活に困ると言うことはなかったのでしょう。しかし、アメリカに亡命した後には生きていくためには演奏家としての活動を優先させるしかなかったのでしょう。さらに、友人から作曲をしない理由を聞かれて「どうやって作曲するというんだ、メロティーがないのに… それに長い間ライ麦のささやきも白樺のざわめきも聞いていないんだ」と答えたという話しも有名です。
つまりは、ロシアという根っこから引っこ抜かれたラフマニノフには霊感が舞い降りてこなかったと言うことです。
そんな彼が再び本格的に作曲活動に舞い戻って仕上げたのが、この交響曲の3番と、彼の最後の作品となった交響的舞曲だといえます。ピアニストとしての名声を確立し生活に憂いもなくなった彼はスイスの別荘で作曲に没頭します。そして、仕上げられた作品から聞こえてくるのは疑いもなくロシアへの郷愁です。
しかし、この作品からはラフマニノフの専売特許のように言われる甘いメロディやメランコリックな憂愁は後景に追いやられています。それは、売れるためにある面では聴衆に迎合してきた彼が、その最晩年においてそういう世俗のことには煩わされずに書きたいものを自由に書いたという風情も感じられます。しかし、1936年11月6日に、ストコフスキーの指揮するフィラデルフィア管弦楽団によって初演されたのですが成功と言えるようものではありませんでした。しかし、そんな作品に目を付けてコンサートで再三取り上げたのがイギリスの指揮者ウッドでした。そして、イギリスにおいてはそのおかげをもって一定の評価を確立することになるのですが、
1番初演のトラウマなのでしょうか、その後も何度か改訂を繰り返して38年にようやくにして決定稿を確定しています。
なるほど、初演以降の出来事はこの作品を語る上で興味深いことです。
イギリス人というのはホントに変わっています。イギリスを代表するこの時代の作曲といえばエルガーとディーリアスですが、彼らに関してイギリス人自身が「エルガーのどこがいいのですかと聞かれれば何とか理解して下さいといえるが、ディーリアスに関してはそれはそうでしょう、というしかない」と開き直るのです。
彼らは分かりやすさよりは晦渋さを好むようで、シベリウスの後期の交響曲を高く評価したのもイギリス人でした。
つまり、このラフマニノフの交響曲もその様な性格をもった作品だということでしょう。
両方アップ!!
手元には二つのパブリックドメインとなった録音があります。
一つはラフマニノフによる自演のもの、もう一つはクーセヴィツキーによる演奏です。
比べてみれば、クーセヴィツキーの方は早めのテンポでキリリと引き締めていますが、ラフマニノフの方はゆったりとロシアへの郷愁を歌い上げています。(・・・だったように記憶しています。聞いたのは半年ほど前で、そのままサイトの一時閉鎖に入って更新が止まってしまったので、すでに記憶は曖昧になりつつあるぞ・・・^^;;。何とも無責任で、それならもう一度聞き直せばいいのでしょうが、何と言っても今は年末で忙しいのである。ゴミ出しから始まって、雑誌やこれから先金輪際読まないであろうと思われるような書籍等々の整理、それに恒例の大掃除やあれこれの買い物などで、そんなときにのんびりと音楽などを聞いていようものなら大変な家庭不和を引き起こしてしまうのである。よって、正確なところは各人が実際に音楽を耳にして判断していただきたい・・・なんて、要はやっぱり無責任なだけ???)
録音的にも充分鑑賞に耐える範囲ですからこの際両方アップしておきましょう。
よせられたコメント
2008-09-20:原 響平
- レナード スラットキンが1970年台に演奏したものは、このクーセビツキーの演奏を手本している様で、少々驚いた。特にラフマニノフの交響曲第3番は1990年代のマリス ヤンソンスのメローで甘美な超名演があるため、このクーセビツキーのストレートな演奏はあまり高い評価を受けることは無いと思う。
2010-07-12:南 一郎
- 指揮者 クーセビツキーはコントラバスしか弾けない指揮者と聞いています。
それが、指揮表現にどのように影響するのか演奏から判断できませんが、作曲者と同世代に同化した感性を持つことに着目したいです。
日本人の作曲家も、ドイツの作曲家も旋律性を生み出すのに行き詰まった上で、其の生きる時代を楽曲に反映させたものが、あまり発展性が見られない短い旋律を積み上げた作風となったのではないでしょうか。
緊張感ある、ある種やり場の無い感情こめた演奏だと聞き取りました。
2014-11-13:鈴木宏
- 私は、クーセヴィツキーの大ファンである。日本では、偏見と誤解に満ちた批評がなされており、本当のすござが理解されていない。まことの残念である。欧米の愛好家が知ったら、驚くであろう。あのバーンスタインが音楽上の父と慕う、20世紀を代表する、音楽界に多大な影響力を及ぼした大指揮者である。このラフマニノフの交響曲第3番は、当初、この曲を理解出来なかった私に、これほどこの曲を分かりやすく聴かせてくれて、しかも私にとってかけがえのない曲となるきっかけを与えてくれた演奏である。録音は古いが、後世の指揮者が範とすべき、歴史的名演であると評価します。
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