ブラームス:交響曲第4番
トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1951年12月3日録音
Brahms:交響曲第4番「第1楽章」
Brahms:交響曲第4番「第2楽章」
Brahms:交響曲第4番「第3楽章」
Brahms:交響曲第4番「第4楽章」
とんでもない「へそ曲がり」の作品

ブラームスはあらゆる分野において保守的な人でした。そのためか、晩年には尊敬を受けながらも「もう時代遅れの人」という評価が一般的だったそうです。
この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。
この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!
それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?
控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。
古典的で厳格な交響曲として仕上がっています。
トスカニーニは1952年の9月から10月にかけてRoyal Albert Hallにおいて、フィルハーモニア管とのコンビでブラームスの交響曲チクルスを開催しています。
この録音は長くお蔵入りしていたのですが、それを数年前にTestamentがリリースして大きな話題となりました。
そして、手兵のNBC交響楽団とも、このチクルスをはさむようにして51年から52年にかけてCarnegie Hallを使って録音を残しています。
この二つの録音は聞きくらべてみると随分と雰囲気の違う演奏に仕上がっています。
ユング君はどこかで、「トスカニーニは何故かイギリスのオケとは相性がいいようだ」と書いたことがありますが、その感想はここでもあてはまります。トスカニーニはNBC交響楽団に対してはどこまでも厳格な家父長のようにふるまっているのに対して、フィルハーモニア管とはより自由でくつろいだ雰囲気がただよっています。そのため、トスカニーニの特徴であるしなやかな歌は、フィルハーモニア管との方が魅力的です。
ただし、腹立たしいのは昨年の著作権法の一部改定で、隣接著作権の保護期間の起算点が「録音」から「発売」に変わったために、フィルハーモニア管との録音の保護期間が100年近くにも達してしまって、おそらくはユング君が生きている間にはパブリックドメインにならなくなってしまいました。そのために、トスカニーニのブラームスとしては「次善の策」としてNBC交響楽団との録音をアップせざるを得ません。
しかし、この4番に関してだけはNBC交響楽団との録音の方がベストチョイスのようです。
と言うのも、何故かフィルハーモニア管との録音はこの4番だけは何故か冴えないのです。そして、逆にNBC交響楽団との録音は、その厳格な音楽づくりがこの作品の性格と一致しているために、実に見事な演奏に仕上がっています。
また、良質な復刻盤が出回るようになって響きに豊かさと潤いがよみがえってみると、巷間言われるほどに聞きづらい音質でもなくなっています。
ですから、4番に関してはこちらの方がベストチョイスと言えます。(ちなみに、1番に関してもNBC交響楽団との録音の方がユング君は好ましく思えます。もちろん反対意見も多いでしょうが・・・)
よせられたコメント
2009-12-17:シューベルティアン
- 「苦悩を突き抜けて歓喜へ!」は明快なメッセージですが、ブラームスは「苦悩、苦悩…」と口のなかでモゴモゴやって、それから黙り込んでしまいます。
いいたいことをはっきりいわない。へんに気負ったところもあり、「まあ、その話はまた次に…」とこちらがいいかけると、ふたたぶ「苦悩、苦悩…」と始まります。
ある意味では「弱気」の表現のようにも聞こえます。ブラームスを理解する人には怒られるか知れませんが。
この人はベートーベンの仕事の後を引き受けたというよりも、楽聖が前進のために振り捨てていった何がしかのものを、慈しみを込めて拾い上げているようにも見えます。
【最近の更新(10件)】
[2026-02-22]

ベートーヴェン:弦楽三重奏曲 第1番 変ホ長調, Op.3(Beethoven:String Trio in E-flat major, Op.3)
パスキエ・トリオ:1950年代録音(Pasquier Trio:Recorded on 1950s)
[2026-02-18]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番へ長調, Op.135(Beethoven:String Quartet No.16 in F major Op.135)
ハリウッド弦楽四重奏団:1957年4月22日,5月11日&6月1日,3日,12日,20日録音(The Hollywood String Quartet:Recorded on April 22, May 11 & June 1, 3, 12, 1957)
[2026-02-16]

スメタナ:わが故郷より(Smetana:from my hometown)
(Vn)ヴァーシャ・プシホダ:(P)リディア・ベフトルト 1949年録音(Vasa Prihoda:(P)Lydia Beftot Recorded on 1949)
[2026-02-12]

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調, Op.47(Sibelius:Violin Concerto in D minor Op.47)
(Vn)ダヴィド・オイストラフ:シクステン・エールリンク指揮 ストックホルム・フェスティヴァル管弦楽団 1954年録音(David Oistrakh:(Con)Sixten Ehrling Royal Stockholm Philharmonic Orchestra Recorded on 1954)
[2026-02-10]

フォーレ:夜想曲第12番 ホ短調 作品107(Faure:Nocturne No.12 in E minor, Op.107)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)
[2026-02-08]

ハイドン:弦楽四重奏曲第59番 ホ長調 Op. 54, No. 3, Hob.III:59(Haydn:String Quartet No.59 in E major, Op. 54, No.2, Hob.3:59)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1936年11月19日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on November 19, 1936)
[2026-02-06]

ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調(Ravel:Piano Trio in A minor)
(Vn)ジャン・パスキエ:(P)リュセット・デカーヴ (Cello)エティエンヌ・パスキエ 1954年発行(Pierre Pasquier:(Cello)Etienne Pasquier (P)Lucette Descaves Published in 1954)
[2026-02-02]

ベートーベン:ピアノソナタ第28番 イ長調 Op.101(Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1956年3月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on March, 1956)
[2026-01-31]

ヴィオッティ:ヴァイオリン協奏曲第22番イ短調 G.97(Viotti:Violin Concerto No.22 in A minor)
(Vn)ジョコンダ・デ・ヴィート:ヴィットリオ・グイ指揮 グラインドボーン祝祭管弦楽団 1953年9月23日~24日&10月10日録音(Gioconda de Vito:(Con)Vittorio Gui Glyndebourne Festival Orchestra Recorded on September 23-24 & Ovrober 10, 1953)
[2026-01-27]

ベートーヴェン:ドン・ジョヴァンニの「お手をどうぞ」による変奏曲 ハ長調, WoO 28(Beethoven:8 Variations on La ci darem la mano from Mozart's Don Giovanni in C Major, WoO 28)
ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1949年録音(Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1949)