クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

シューベルト:ピアノソナタ(第17番) ニ長調 D.850

シュナーベル:1939年1月26・27日録音





Schubert:ピアノソナタ第17番 D.850 「第1楽章」

Schubert:ピアノソナタ第17番 D.850 「第2楽章」

Schubert:ピアノソナタ第17番 D.850 「第3楽章」

Schubert:ピアノソナタ第17番 D.850 「第4楽章」


天国的な長さ?

1825年にシューベルトは3つのピアノソナタを書いています。ドイチェ番号でいうと「D.840:ハ長調」「D.845:イ短調」「D.850:ニ長調」です。しかし、ハ長調のソナタは第3・4楽章が未完成のまま放置されていて、そのアイデアをもとにイ短調のソナタが完成されていることは明らかなので、ある意味では「試作品」と見ることができます。(ただし、実用上の問題として、ハ長調のソナタは別の人物が補筆して完成させたものを使って独立した作品として演奏されることが一般的です)

これら一連のソナタは、ハ長調交響曲が完成された直後に創作されており、シューベルトがアマチュア的な作曲家からプロの作曲家へと大きく羽ばたきはじめた時期に一致しています。さらに、シューベルトにとって「ソナタ形式」はベートーベンを意識せずにはおれないジャンルでしたが、その桎梏からようやくにして解き放たれ、シューベルト独自の音楽語法を獲得しはじめた時期でもあります。

そして、ここでお聞きいただいているニ長調のソナタは、これら3つのソナタの中では特に長大な作品となっています。それは、ハ長調交響曲と共通する「天国的な長さ」だともいえます。
とりわけ、第2楽章の浮遊感のただよう、光と影が交錯するような音楽はシューベルトらしい美しさにあふれていて、どこか現世をはなれたようなその音楽は明らかに「天国的」です。
そしてその両端を重厚な和声によって構成された巨匠的な第1楽章と、躍動的で長大な(長大すぎる?)第3楽章のスケルツォによって挟み込まれているこのソナタは、ベートーベンの影響をうけながらも、それを突き破ってシューベルト独自の音楽語法が展開されはじめていることをハッキリと見て取ることができます。

問題は最終楽章です。
シューマンはこのピアノソナタを高く評価しながらも、最終楽章には異議を唱えています。今日ではその様なシューマンの評価に対して異議を唱える人も多いのですが、ユング君の意見としてはシューマンに軍配をあげたいと思います。
言葉は悪いですが、聞きようによってはラジオ体操の音楽を思わせるような安直さを感じてしまいます。その安直さは、それに先行する3つの楽章があまりにも素晴らしいがために、より際だって見えてしまいます。
この辺がプロになり切れていないシューベルトの弱さがあらわれているのかもしれません。(もちろん異論はあるでしょうが・・・)

シューベルトのピアノソナタを積極的に紹介したシュナーベル


シューベルトのピアノソナタは今日ではピアニストたちにとって貴重なプログラムとなっていますが、20世紀の初期においては決して重要な作品とはなっていませんでした。
これは歴史的録音を探していて気づいたことなのですが、録音そのものが非常に少ないのです。
そんな中にあって、シュナーベルは演奏会でもよく取り上げ、録音も数多く残して、シューベルトのピアノソナタの普及につとめました。

そして、これはユング君の私見ですが、シュナーベルにとってベートーベンよりもシューベルトの方が体質的に相性が良かったのではないかと思ってしまいます。
ベートーベンのソナタでは、ストイックに演奏することを自らに強いているように感じるときがありますが、シューベルトではもっとくつろいで演奏しているに感じられます。シューベルトらしい歌心に満ちたところではテンポを動かしてロマンティックに演奏していて、それはシュナーベル自身の肉声にふれるような思いがします。

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