フランク:交響曲 ニ短調 FWV 48
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団1957年7月29&30日録音
Franck:Symphony in D Minor FWV 48 [1.Lento]
Franck:Symphony in D Minor FWV 48 [2.Allegretto]
Franck:Symphony in D Minor FWV 48 [3.Allegro non troppo]
偉大なるマイナー曲
この屈指の名曲を「マイナー曲」と言えばお叱りを受けそうですが、意外ときいていない人が多いのではないでしょうか?まあCDの棚に一枚か二枚程度は並んでいるのでしょうが、それほどに真剣に聞いたことはないと言う人も多いのではないでしょうか?
名曲というハンコはしっかり押されているにもかかわらず何故か人気はないと言う点で、「偉大なマイナー曲」と表現させてもらいました。
理由はいくつか考えられるでしょうが、まず第一に、フランクが交響曲という分野ではこれ一曲しか残さなかったことがあげられるでしょう。
交響曲作家というのは一般的に多作です。ベートーベンの9曲を代表として、少ない方ではブラームスやシューマンの4曲、多い方ではショスタコーヴィッチの15曲というあたりです。マーラー、ブルックナー、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、シベリウスなどなど、誰を取り上げてもそれなりにまとまった数の交響曲を残しました。
それだけにたった1曲しか残さなかったフランクの交響曲は、何かの間違いで(^^;、ポット産み落とされたような雰囲気が漂って「あまり重要でない」ような雰囲気が漂ってしまうのがマイナー性を脱却できない一つの理由となっているようです。
ただ、これは彼の人生を振り返ってみると大きな誤解であることは明らかです。吉田秀和氏がどこかで書いていましたが、60歳をこえ、残りの人生が少なくなりつつある10年間に、それこそねらいを定めたように、一つのジャンルに一作ずつ素晴らしい作品を産み落としたのがフランクという人でした。
そして、交響曲という分野においてねらいを定めてたった一つ産み落とされたのがこの交響曲なのです。
何かの片手間でポッと一つだけ作曲されたのではなく、自分の人生の総決算として、まさにねらいを定めたように交響曲という分野でたった一つだけ生み出され作品がこのニ短調のシンフォニーなのです。
さらにマイナー性を脱却できない第二の理由は作品が持つ「暗さ」です。とりわけこの作品の決定盤として君臨してきたフルトヴェングラーの演奏がこの暗さを際だたせた演奏だっただけに、フランクの交響曲は「暗い」というイメージが定着してしまいました。
たしかに、第一楽章の冒頭を聞くと実に「暗い」事は事実です。しかし、聞き進んでいく内に、この作品の本質がそのような暗さにあるのではなく、じつは「暗」から「明」への転換にあることに気づかされます。
そう、辛抱して最後まで聞いてくれればこの作品の素晴らしさを実感してもらえるのに、多くの人は最初の部分だけで辟易して、聞くのをやめてしまうのです。(実はこれってかつてのユング君でした・・・)
最終楽章の燦然と輝く音楽を聴いたとき、このニ短調の交響曲というのはあちこちで言われるような晦渋な作品ではなく、実に分かりやすい作品であることが分かります。そして、いかにドイツ的な仮面をかぶっていても、この作品は本質的にはフランスの音楽であることも了解できるはずです。
音符一つもおろそかにしない精緻さへの指向
ジュリーニとフランクの交響曲は相性が悪そうな気がするのですが、調べてみると3回も録音を残しています。1959年と1986年はスタジオ録音ですが、最後の1993年は時の流れで「ライブ録音」です。
フィルハーモニア:1957年録音
ベルリン・フィル:1986年録音
ウィーン・フィル:1993年録音
ジュリーニという人は不思議な人で、レパートリーが狭いようでいながら、あれっ、こんな曲も録音しているの?みたいなところがあります。
狭いというのは、これほどの大家でありながらベートーベンの好局を全集としてまとめて録音していないこと。もちろん残され食べーt-べんの交響曲はどれもみんな見事なもので、とりわけロスフィルとの「田園」なんかはまさに「裏名盤」(いや、表だ!と言う声もあり)です。
そして、晩年にスカラ座のオケと全集を目指したものの、最後に「第9」を残してあの世に逝かれてしまいました。
逆の「あれっ、こんな曲も?」の個人的筆頭はドビュッシーの「海」であり、このフランクの交響曲なんかもその「あれ?」の中に入ります。(ボッケリーニの交響曲なんかも吃驚です。)
もちろん、今さら何を言っているの?と言う方もおられるでしょうが、個人的にはその通りだったのです。
そして、ジュリーニ30代の頃の主要なパートナーであったフィルハーモニアとの録音では、まさに音符一つといえどもおろそかにしない精緻な演奏を、適切な(^^vテンポでグイグイと引っ張っていきます。
おそらく、このやり方でもっとも効果が上がっているのがドビュッシーの「海」だと言い切れます。それから、作品との相性もあって、スイスの時計職人ラヴェルの作品(ダフニスとクロエ第2組曲)も見事なのですが、それはいわゆる「想定の範囲内」という奴で感心はしても驚きはしません。
それから、この時期に何故かハイドンの94番「驚愕」なんかも録音してるのですが、本当に見事な造形で、毎度の物言いで申し訳ないのですが、その後からベートーベンが顔を覗かせているのがはっきりと見て取れます。
それらにたいして、同じドビュッシーでも「海」よりはさらにパステルな感じが強い「夜想曲(Nocturnes)」みたいな作品になると、いささか苦労している感があります。
そして、このフランクの交響曲なんかも、非常にソリッドで推進力に見た演奏なので、それはそれで聴き応えがあるのですが、はて、それがフランクが求めたものだったのかと言えばいささか疑問は残るでしょう。おそらく、フランクがイメージした音楽はこのような直線で区切られたものではなくて、もう少しこまめにギヤチェンジをしながら込み入った曲線路を行くものだったのではないでしょうか。
その意味で言えば、音符一つをおろそかにしないというスタンスは同じでも、ベルリンフィルとの80年代の録音の方がよりフランク的な感じがします。(90年代のウィーンフィルとの録音は未聴)
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