シューベルト:劇付随音楽 「ロザムンデ」D797
スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ指揮 ミネアポリス交響楽団 1961年3月27日録音
Schubert:Rosamunde, Iincidental Music [1.Overture]
Schubert:Rosamunde, Iincidental Music [2.Entr'acte, No.2]
Schubert:Rosamunde, Iincidental Music [3.Ballet, No.2]
音楽だけは残った(^^v

ロザムンデと言えばシューベルトと結びつくほどにこの作品は有名です。
原作は、ベルリン出身の女流作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの戯曲『キプロスの女王ロザムンデ』です。しかし、この戯曲はおそろしく出来の悪いもので、わずか2日で上演が打ち切られてしまいました。
しかし、幸いだったのは、この戯曲に付随音楽をつけたのがシューベルトだったことです。おかげで、戯曲の方は台本も残らないほどのお粗末さだったのに、このシューベルトの音楽によって女流作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの名前は歴史に刻まれることになりました。
なお、この劇音楽の序曲は今日では「ロザムンデ序曲」と呼ばれているのですが、実は別の作品のための序曲だったものを使い回したものでした。しかし、本来の出所であるオペラ「アルフォンゾとエストレラ」はほとんど忘却の彼方に行ってしまったために、本来は「アルフォンゾとエストレラ」序曲とよぶべきはずのものが「ロザムンデ序曲」として定着してしまいました。
しかし、この美しいメロディはシューベルトが書いた音楽の中でも屈指のもので、その美しさと「ロザムンデ」のイメージがあまりにも見事に結びついているが故に、やはりこれは「ロザムンデ序曲」とよぶしかないと思えます。
全曲は上記の序曲と10曲からなりますが、一般的には序曲と第3幕間奏曲、そしてバレエ音楽第1番・第2番が抜粋して演奏されることが多いようです。とりわけ、第3幕間奏曲は弦楽四重奏曲第13番『ロザムンデ』に転用されているのでとりわけ有名です。
「序曲」
「間奏曲第1番」
「バレエ音楽 第1番」:木管楽器の響きが素晴らしい!!
「間奏曲 第2番」
「ロマンス<満月は輝き>」:アルトの独唱です。
「亡霊の合唱<深みの中に光が>」:男声合唱です。
「間奏曲 第三番」:弦楽四重奏曲第13番の第2楽章に登場する有名なメロディです。
「羊飼いのメロディ」
「羊飼いの合唱<この草原で>」:混声合唱です。
「狩人の合唱<緑の明るい野山に>」:混声合唱・男声合唱・女声合唱で歌われます。
「バレエ音楽 第二番」:終曲です。
スコアに書かれた音は全て聞き手に伝えるべき
「Stanislaw Skrowaczewski」・・・日本では長く「スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ」と表記されてきましたが、実際の発音に則せば「スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ」の方が正しいそうなので、最近は「スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ」と表記されることが多くなってきているようです。
ただし、何処の国であっても,
「スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ」であろうが、「スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ」であるが、あまりにも長すぎて発音しづらいので、とりわけ英語圏を中心として「Mr.S(ミスターS)」と呼ばれることが多い指揮者です。そして、最近は読売日本交響楽団との関係が深いので日本人にとっては非常に馴染みのある指揮者の一人ともなっています。
それにしても、芸歴の長い人です。
1923年生まれですから、今年で御年92歳です。大変な早熟の天才で、11歳でピアニストとしてリサイタルを開き、13歳でベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を弾き振りするなど、神童ぶりを発揮した話は結構有名です。しかし、彼の名が世界に知れ渡ったのはセルの目にとまってクリーブランド管の客演に招かれた事がきっかけでした。そして、その客演指揮の成功でドラティの跡を継いでミネアポリスのオケを率いる事になり、さらにそのコンビでマーキュリー・レーベルやVOXレーベルに多くの録音を行ったことにによって多くの人にその存在を知られるようになりました。
そして、20年に近くにわたったミネアポリスとの関係を終えて再びヨーロッパに戻り、とりわけ1990年代にザールブリュッケン放送交響楽団とブルックナーの交響曲全集を完成させたことで押しも押されもせぬビッグネームの一人となりました。
「Mr.S」は本業は指揮者なのでしょうが、作曲家としての活動も活発に行っているという点ではパレーなどと似通っています。その意味では、作曲家が指揮活動を行ったときの特徴がそっくりそのまま彼にもあてはまります。
作曲家としての立ち位置がパレーと「Mr.S」とでは随分と違うのですが、指揮活動と言うことになると似通ってくるのは面白い現象です。
パレーのところで次のように述べたことが、「Mr.S」にもほぼあてはまるのではないでしょうか。
プロの作曲家であれば、言いたいこと、表現したいことは全て楽譜に詰め込んだという思いがあるはずです。
ですから、かなり思い切った言い方をしてしまえば、作曲家が指揮者(演奏家)に求めるものは、その楽譜を大切にして、それを「いかに」表現するかに力を傾注してくれることです。
間違っても、その楽譜を深読みして、そこに「何が」表現されているかを詮索し、その詮索をもとにしてもう一度「今まさに作品が生まれたか」かのように演奏するなどというのはお節介以外の何ものでもないはずです。」
そして、この「表現したいことは全て楽譜に詰め込んだという思い」はより強く、そうであるならば、そのスコアに書かれた音は全て聞き手に伝えるべき努力をするのが指揮者の仕事だというスタンスを絶対に崩さないのが「Mr.S」なのです。そして、そう言う彼の信念は若い頃からすでに確立していたことがはっきりと分かるのが、この30代のシューベルトの録音です。
非常に全体のバランスが良くて、ともすればエキセントリックになりがちなパレーと較べれば非常に真っ当な演奏に聞こえます。しかし、その真っ当なように聞こえる背景にある「バランス」と「明晰さ」への執念は尋常でないことが、聞き進んでいくうちにじわじわと伝わってきます。そして、その明晰さへの執念がともすれば音楽的なスケールを小さくするという批判がよく浴びせられるのですが、これを聞くと、ではあなたの言う「音楽的スケールっていったい何なのよ?」と聞いてみたくなったりします。
それはもしかしたら、「「何が」表現されているかを詮索し、その詮索をもとにしてもう一度「今まさに作品が生まれたか」かのように」演奏することを求めているのだとしたら、それは求める方が間違っているのです。最初から求めもしなければ追求もしていないものがないからと言って文句を言うのは筋違いで、もしもそう言うものが欲しいのならば、そう言うものを「売っている」お店に行けばいいのです。
でも、八百屋に行って肉がないと喚いている人の何と多いことか!!
<収録作品>
「序曲」・「間奏曲 第2番」・「バレエ音楽 第2番」
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