ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調 作品90
ブルーノ・ワルター指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1953年12月21日&23日録音
Brahms:交響曲第3番「第1楽章」
Brahms:交響曲第3番「第2楽章」
Brahms:交響曲第3番「第3楽章」
Brahms:交響曲第3番「第4楽章」
秋のシンフォニー

ユング君は長らくブラームスの音楽が苦手だったのですが、その中でもこの第3番のシンフォニーはとりわけ苦手でした。
理由は簡単で、最終楽章になると眠ってしまうのです(^^;
今でこそ曲の最後がピアニシモで消えるように終わるというのは珍しくはないですが、ブラームスの時代にあってはかなり勇気のいることだったのではないでしょうか。某有名指揮者が日本の聴衆のことを「最初と最後だけドカーンとぶちかませばブラボーがとんでくる」と言い放っていましたが、確かに最後で華々しく盛り上がると聞き手にとってはそれなりの満足感が得られることは事実です。
そういうあざとい演奏効果をねらうことが不可能なだけに、演奏する側にとっても難しい作品だといえます。
第1楽章の勇壮な音楽ゆえにか、「ブラームスの英雄交響曲」と言われたりもするのに、また、第3楽章の「男の哀愁」が滲み出すような音楽も素敵なのに、「どうして最終楽章がこうなのよ?」と、いつも疑問に思っていました。
そんなユング君がふと気がついたのが、これは「秋のシンフォニー」だという思いです。(あー、またユング君の文学的解釈が始まったとあきれている人もいるでしょうが、まあおつきあいください)
この作品、実に明るく、そして華々しく開始されます。しかし、その明るさや華々しさが音楽が進むにつれてどんどん暗くなっていきます。明から暗へ、そして内へ内へと音楽は沈潜していきます。
そういう意味で、これは春でもなく夏でもなく、また枯れ果てた冬でもなく、盛りを過ぎて滅びへと向かっていく秋の音楽だと気づかされます。
そして、最終楽章で消えゆくように奏されるのは第一楽章の第1主題です。もちろん夏の盛りの華やかさではなく、静かに回想するように全曲を締めくくります。
そう思うと、最後が華々しいフィナーレで終わったんではすべてがぶち壊しになることは容易に納得ができます。人生の苦さをいっぱいに詰め込んだシンフォニーです。
同じ作品を異なった演奏で聴く楽しみとは?
一気に3通りの録音をアップしてみました。
クラシック音楽を聴く楽しみの一つに同じ作品を異なった演奏で聞くことがあげられます。時には「どれが決定盤か?」みたいな非生産的で不毛な論議を巻き起こしたりもする「楽しみ」ですが(^^;、それでもいろいろな演奏家の様々なアプローチに接することは興味深いことです。
フルトヴェングラーが49年、セルとワルターは共に51年の演奏ですが、録音は十分に優秀です。
第一楽章の冒頭を聞くだけで三者の違いは一目瞭然です。そしてテンポの問題も含めてフルトヴェングラーという人の特異性がはっきりと分かっていただけると思います。
フルヴェンはここでもブラームスの交響曲をこの上もなく劇的なドラマとして聴かせてくれます。とりわけ両端楽章の素晴らしさは常に指摘されてきたことです。
セルもまたブラームスのシンフォニーの中ではこの3番をもっとも得意としていたようで、後年、クリーブランドと録音した全集の中でも一番出来がいいと言われるのがこの3番でした。ある意味ではフルヴェンのアプローチとは対極にある演奏です。ただ、完成度という点では後のスタジオ録音に劣るのが残念です。
そしてこういう言い方は図式的にすぎて危険なのですが、その両者の中間に位置するのがワルターの演奏だといえます。(しかし本質的にはセルの側にふれた演奏です。)
しかし、何というか、作品の持つ古典的な均衡は全く崩れていないのですが、セルの演奏にはない聞き易さがあります。
そして、これまたワルターの後年のコロンビア響との録音では聞くことのできない「熱とパワー」を感じることができます。ワルターのブラームスというとコロンビア響との録音が広く世間に流布しているのですが、本当に素晴らしいのはこのニューヨークフィルとの録音です。(モノラルですが・・・)
セル信奉者のユング君ですが、これに関してはワルターのCDに手が伸びてしまうことは正直に告白しなければなりません。
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