ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
カラヤン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年5月録音
Brahms:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
変奏曲という形式にける最高傑作の一つ
これが、オーケストラによる変奏曲と括りを小さくすれば、間違いなくこの作品が最高傑作です。
「One of The Best」ではなく「The Best」であることに異論を差しはさむ人は少ないでしょう。
あまり知られていませんが、この変奏曲には「オーケストラ版」以外に「2台のピアノによる版」もあります。最初にピアノ版が作曲され、その後にオーケストラ版が作られたのだろうと思いますが、時期的にはほとんど同時に作曲されています。(ブラームスの作品は交響曲でもピアノのスコアが透けて見えるといわれるほどですから・・・)
しかし、ピアノ版が評判となって、その後にオーケストラ版が作られた、という「よくあるケース」とは違います。作品番号も、オーケストラ版が「Op.56a」で、ピアノ版が「Op.56b」ですから、ほとんど一体のものとして作曲されたと言えます。
この作品が作曲されたのはブラームスが40歳を迎えた1873年です。
この前年にウィーン楽友協会の芸術監督に就任したブラームスは、付属している図書館の司書から興味深いハイドンの楽譜を見せられます。野外での合奏用に書かれた音楽で「賛美歌(コラール)聖アントニー」と言う作品です。
この作品の主題がすっかり気に入ったブラームスは夏の休暇を使って一気に書き上げたと言われています。
しかし、最近の研究では、この旋律はハイドン自身が作曲したのではなく、おそらくは古くからある賛美歌の主題を引用したのだろうと言われています。
それが事実だとすると、、この旋律はハイドン、ブラームスと二人の偉大な音楽家を魅了したわけです。
確かに、この冒頭の主題はいつ聞いても魅力的で、一度聞けば絶対に忘れられません。
参考までに全体の構成を紹介しておきます。
主題 アンダンテ
第1変奏 ポコ・ピウ・アニマート
第2変奏 ピウ・ヴィヴァーチェ
第3変奏 コン・モート
第4変奏 アンダンテ・コン・モート
第5変奏 ヴィヴァーチェ
第6変奏 ヴィヴァーチェ
第7変奏 グラツィオーソ
第8変奏 プレスト・ノン・トロッポ
終曲 アンダンテ
冒頭の魅力的な主題が様々な試練を経て(?)、最後に堂々たる姿で回帰して大団円を迎えると言う形式はまさに変奏曲のお手本とも言うべき見事さです。
一切のはったりを排して音楽をあるがままに造形する
カラヤンにとってブラームスの交響曲は持ちネタの一つだったようです。とりわけ、第1番の交響曲は愛着があったようで、何度も録音を繰り返しています。
ただし、そのテイストは年を追うにつれて少しずつ変化していったようで、ある人は「60年代=素直、70年代=ドーピング、80年代=重厚」と評していました。
「70年代=ドーピング」はあまりにもピッタリの表現なので思わず笑ってしまいました。
では、ベルリン以前の50年代の演奏はどうかと聞かれると、これはもう「実に見事だった!」と答えざるを得ません1番だけでなく、それ以外の2番や4番においても正統派の見事な演奏を聴かせてくれています。
そして、このブラームスの演奏から受ける印象は以前にベートーベンについて書いたものと全く同一です。
「50年代の録音を聞くとトスカニーニよりはワインガルトナーなんかの方がより近しいのではないかと思ってしまいます。奇をてらわず音楽を自然な形で構築していく姿はそう言う先人たちの姿にだぶるものがあります。・・・ぼんやり聞いていると、この50年代のフィルハーモニア管弦楽団との録音は特徴のない面白味のないものに聞こえるかもしれません。しかし、一切のはったりを排して音楽をあるがままに造形することでこれほども説得力の強いものを作っていくというのはなかなかどうして、並大抵の力量ではありません。」
聞き終わった後に、いい音楽を聴かせてもらったなと言う充実感をもらえる演奏であることは事実です。
そして、それこそが「録音」という行為の何たるかを見据えていたカラヤンという男の凄さが表れだったのだと、最近になってつくづく感心させられている次第なのです。
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