クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ショパン:12の練習曲 作品10

P:アラウ 1956年6月16日~20日録音





Chopin:12の練習曲 作品10 第1番 ハ長調

Chopin:12の練習曲 作品10 第2番 イ短調

Chopin:12の練習曲 作品10 第3番 ホ長調  「別れの曲」

Chopin:12の練習曲 作品10 第4番 嬰ハ短調

Chopin:12の練習曲 作品10 第5番 変ト長調 「黒鍵」

Chopin:12の練習曲 作品10 第6番 変ホ短調

Chopin:12の練習曲 作品10 第7番 ハ長調

Chopin:12の練習曲 作品10 第8番 ヘ長調

Chopin:12の練習曲 作品10 第9番 ヘ短調

Chopin:12の練習曲 作品10 第10番 変イ長調

Chopin:12の練習曲 作品10 第11番 変ホ長調

Chopin:12の練習曲 作品10 第12番 ハ短調 「革命」


とりあえず簡単な作新紹介

・作品10
第1番  ハ長調 作品10-1(アルペッジョの練習曲)
第2番  イ短調 作品10-2(半音階の練習曲)
第3番  ホ長調 作品10-3「別れの曲」(表題はショパン自身のものではない!)
第4番 嬰ハ短調 作品10-4[68](一番難しい曲!)
第5番 変ト長調 作品10-5「黒鍵」(あまり評判が良くない!〜ビューロー曰く、「婦人サロン用練習曲」)
第6番 変ホ短調 作品10-6(外声と内声を弾き分ける指の独立を練習)
第7番  ハ長調 作品10-7(トッカータ風練習曲)
第8番  ヘ長調 作品10-8(右手の練習?)
第9番  ヘ短調 作品10-9
第10番 変イ長調 作品10-10(ビュロー曰く、「天分と空想に満ちた無窮動的性格を持った練習曲」だとか・・・)
第11番 変ホ長調 作品10-11(オクターブをしっかり弾いて手を広げる練習)
第12番  ハ短調 作品10-12「革命」(技術的には左手のための練習曲)


気力、体力がみなぎった全盛期の演奏


アラウというピアニストは神童としてもてはやされて、わずか5歳で最初のリサイタルを持ったほどの人ですが、驚くのは最晩年まで第一線で活躍したその息の長さです。そして、それぞれの年代において、その年代に相応しい演奏と録音を残したことも特筆されるべきでしょう。
しかし、レコード会社の営業政策もあって、どうしても新しい録音が評論家先生たちによって褒めそやされるので、アラウの録音と言えば、「感覚的な美や効果を一切そぎ落とした演奏である」とか「抑制の効いた大人の世界は噛めば噛むほど味が出る」などという、持って回った言い方で「褒められる」ことが多くなってしまいました。
どうもこの国ではホロヴィッツなどの一部を例外として、外面的な演奏効果を表に押し出すような演奏は低く見られるので、そう言う言葉は「ほめ言葉」になるのでしょうが、勘違いしてはいけないのはアラウという比とは若いときかららあんな「渋い」演奏をしていたわけではないと言うことです。

たとえば、今回アップしたショパンのエチュードはそんな持って回った「エクスキューズ」で褒めなくても、最初の1曲を聞くだけで、だれもが「ブラボー!!」の言葉を惜しまないでしょう。

以前にアップした前奏曲集は1950年の録音なので、その古さゆえもあってそう言う華やか素晴らしさはとらえにくかったのですが、エチュードの方は録音が56年ですから何の問題もありません。・・・などと書いてから、少し気になったのでもう一度50年録音の前奏曲集」を聞き直してみました。
再生システムに「Voyage MPD」を据えてから、今まではそれほどでもないと思っていた録音が、実は凄かったという体験を何度かしているからです。ただし、この逆も結構多くて、録音だけで演奏を評価することの難しさを思い知らされます。

結果は、やはり危惧(?)したとおりで、「Voyage MPD」を使って聞いた前奏曲集は、とてもその時代のものとは信じがたいほどの良好な音質でアラウの凄さが収録されていることに気づかれました。その結果として、この50年録音の前奏曲集に収録された大切な部分をものの見事に聞き落としていた事も思い知らされました。
ですから、この「全曲集」の録音に対して「いわゆる華やかさみたいなものを前面に押し出すタイプでないことはすぐに分かります」などと書いたことは全面的に訂正し直さないといけないことに気づかされました。

ともに、40代の後半から50代の初めという、まさに気力、体力がみなぎった全盛期の演奏であり、その演奏は「感覚的な美や効果を一切そぎ落とした、噛めば噛むほど味が出る」どころか、「感覚的な美や効果に満ちあふれた」、まさに「口に入れたとたんに至福の世界が広がる」素晴らしい演奏なのです。
つまり、50年に録音された「前奏曲集」も56年に録音された「エチュード」も、ともに同じベクトルを持った演奏だったのです。

その輝かしい響きでもって、全ての音が何の曖昧さもなく鳴り響く様はまさにピアノによる音楽を聞くときの感覚的な楽しみに満ちあふれています。そして、驚くべきは、そのような一音たりとも曖昧にしない明晰さを保持しながら、音楽は決して固くなることはなく、しなやか歌心に満ちていて、その背景からショパンという男の素顔が浮かび上がってくることです。
また、そのテクニックの素晴らしさもホロヴィッツと比べたって何の遜色もないものです。

晩年の「枯れた演奏」だけでアラウを知っている人には、是非とも一度は聞いてほしい録音です。

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