クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

J.シュトラウス:ウィンナーワルツ集

ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1957年4月15日&16日録音





Josfe_Strauss:ワルツ「オーストリアの村つばめ」Op.164

J_Strauss:ワルツ「美しく青きドナウ」Op.314

J_Strauss:皇帝円舞曲 Op.437

J_Strauss:ワルツ「朝刊」Op.279


社交の音楽から芸術作品へ

<収録曲>
1: ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「オーストリアの村つばめ」Op.164
2: ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」
3: ヨハン・シュトラウス2世:皇帝円舞曲Op.437
4: ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「朝刊」Op.279

父は音楽家のヨハン・シュトラウスで、音楽家の厳しさを知る彼は、息子が音楽家になることを強く反対したことは有名なエピソードです。そして、そんなシュトラウスにこっそりと音楽の勉強が出来るように手助けをしたのが母のアンナだと言われています。後年、彼が作曲したアンネンポルカはそんな母に対する感謝と愛情の表れでした。
やがて、父も彼が音楽家となることを渋々認めるのですが、彼が1844年からは15人からなる自らの楽団を組織して好評を博するようになると父の楽団と競合するようになり再び不和となります。しかし、それも46年には和解し、さらに49年の父の死後は二つの楽団を合併させてヨーロッパ各地へ演奏活動を展開するようになる。
彼の膨大なワルツやポルカはその様な演奏活動の中で生み出されたものでした。そんな彼におくられた称号が「ワルツ王」です。
たんなる社交場の音楽にしかすぎなかったワルツを、素晴らしい表現力を兼ね備えた音楽へと成長させた功績は偉大なものがあります。

華やかな大人の舞踏会


この録音は、かのシュヴァルツコップが無人島に持って行きたい一枚として選んだことで、すっかり有名になりました。
ただし、ネット上を探し回っても、この「選んだ」という情報は二次情報(伝聞)ばかりで一次情報は見つけ出せませんでした。ドイツの音楽雑誌のインタビューに答えたものというところまでは分かったのですが、肝心のインタビューの全文は確認できませんでした。
考えてみれば、全体の文脈から切り離されて一つのフレーズだけが一人歩きをし、それが何の検証もなしにネット上で次から次へと広められていくというのは少々「危ない」感じがします。
はたして彼女は、真摯に考えた末にこの一枚を押したのか、それともあまりにも愚かな質問ゆえに洒落として答えたのか、そんなことすらも分かりませんでした。
ですから、自分では満足に聞きもしないで、この一言だけを頼りに「ライナーのウィンナーワルツって凄いんだぞ!!」なんて吹聴している人がいるとすれば愚の極みです。

とはいえ、この録音を実際に耳にしてみれば悪い演奏でないことはすぐに分かります。ただし、無人島に持って行きたい一枚としてこれを選びたいとは思いませんが・・・。

このシュヴァルツコップが選んだアルバムは、「ウィンナ・ワルツ名演集」としてリリースされたもので、以下の曲が収録されています。

1: ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「朝刊」Op.279
2: ヨハン・シュトラウス2世:皇帝円舞曲Op.437
3: ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」
4: ウェーバー:「舞踏への勧誘」(ベルリオーズ編)
5: ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「オーストリアの村つばめ」Op.164
6: リヒャルト・シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」ワルツ(ライナー編)

聴いてすぐに分かるのは、例のウィーン訛りが全くないことです。
こういうウィンナーワルツを聞かされると、あの崩れたリズムによるウィーン風の演奏がまるで場末の娼婦のように聞こえます。もっとも、そういう崩れた雰囲気も時にはいいのですが、無人島に一人取り残されてあんな演奏を聴かされたら生きていく気力が消え失せます。
それと比べれば、ライナーの演奏は豪華な衣装に身をつつんだ紳士淑女による華やかな舞踏会を想起させてくれます。これだったら、いつかこの島を抜け出して復活してやるという気迫が生まれそうです。

そから、ふと思い出したのは同じハンガリー出身のセルも同じようなテイストのウィンナーワルツを残していたことです。当然のことながらウィーン訛りなどはどこを探しても見つからず、三拍子は三拍子として正確に振っています。
しかし、悔しいことに、ライナー&シカゴの方が明らかに大人の余裕みたいなものが感じ取れます。あのセルの棒になるウィンナーワルツは端正であっても夢見るような豪華さにはかけます。
たとえてみれば、どこか士官学校の舞踏会みたいな風情が漂います。

この両者の違いはオケの響きの違いによるものでしょう。
クリーブランドの響きはシカゴと比べればかなり細身でデッドです。もちろん、RCAがリビング・ステレオシリーズの一枚として力を傾注した録音と、エピックという二流レーベルで問題の多い録音としてリリースされたものを同列で比べるのは不公平なことは分かっています。
しかし、そういうことを割り引いたとしても、シカゴのふくよかで厚みある響きはクリーブランドには絶対求められないものです。
なるほど、だからセルはオケをさらに鍛えて筋肉の鎧をまとわせる事に力を注いだのでしょう。
ハンガリーに生まれ、その芸術的な根っこをウィーンに持つ二人の指揮者の微妙なライバル関係を垣間見たと言えば深読みに過ぎるでしょうか。

よせられたコメント

2011-09-10:原 響平


【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-02]

J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-30]

ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)

[2025-09-28]

エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)

[2025-09-26]

ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60(Beethoven:Symphony No.4 in Bflat major ,Op.60)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1962年1月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on January, 1962)

[2025-09-24]

フォーレ:夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(Faure:Nocturne No.3 in A-flat major, Op.33 No.3)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-09-22]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op. 51-2(Brahms:String Quartet No.2 in A minor, Op.51 No.2)
アマデウス弦楽四重奏団 1955年2月11日~12日&14日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in February 11-12&14, 1955)

[2025-09-20]

エルガー:序曲「フロワッサール」, Op.19(Elgar:Froissart, Op.19)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1966年7月14日~16日録音(Sir John Barbirolli:New Philharmonia Orchestra Recorded on July 14-16, 1966)

[2025-09-18]

バッハ:トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV.564(Bach:Toccata, Adagio and Fugue in C major, BWV 564)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-16]

メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 Op.54(Mendelssohn:Variations Serieuses, Op.54)
(P)エリック・ハイドシェック:1957年9月20日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n September 20, 1957)

[2025-09-14]

フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

?>