クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

マーラー:交響曲第2番 ハ短調 「復活」

ワルター指揮 ニューヨークフィル エミリア・クンダリ(S) モーリン・フォレスター(A) 1958年2月録音





Mahler:交響曲第2番 ハ短調 「復活」 「第1楽章」

Mahler:交響曲第2番 ハ短調 「復活」 「第2楽章」

Mahler:交響曲第2番 ハ短調 「復活」 「第3楽章」

Mahler:交響曲第2番 ハ短調 「復活」 「第4楽章」

Mahler:交響曲第2番 ハ短調 「復活」 「第5楽章」


交響曲の時代の終焉を飾った人、それがマーラーでした

と書けば反論が返ってくるかもしれません。マーラー以後も交響曲を書きつづけた人がいるからです。
 たとえば、シベリウス、たとえば、ショスタコーヴィッチ。
 
 しかし、彼らの交響曲は、クラシック音楽の中心に座りつづけてきた交響曲のありようとはどこかが違います。
 シベリウスはその最後において、これ以上は切り詰めようもないほどの単楽章の7番で最後を飾ります。ショスタコーヴィッチも、14番では歌曲集だといわれても仕方のないような形に行き着きます。

 そう言う意味では、ハイドン、ベートーベンと受け継がれてきた王道としての交響曲は、恐竜のように巨大化した果てに、マーラーで滅びてしまったと言っても言い過ぎではありません。

 それにしても、巨大なシンフォニーです。普通に演奏しても90分はかかります。最終楽章だけでも30分ではおさまりきれません。オーケストラの構成も巨大化のきわみに達します。
 彼はその晩年において、演奏に1000人を要する第8交響曲を生み出しますが、その巨大化のへの傾向はこの第2番でもはっきりとしています。特にこの最終楽章のラスト数分間に渡って繰り広げられる絢爛たる響きは特筆ものです。

 そう言えば、この絢爛たる響きに魅せられて、これ一曲だけの指揮者になった人物がいました。彼は、そのために事業を起こして成功をおさめ、稼いだお金で指揮法を学び、プロのオーケストラを雇っては練習を重ねました。
 そして、仕事の合間をぬっては、一曲だけの指揮者と銘打って演奏会を行いました。もちろん、自分のお金でオーケストラを雇ってですが、評判が高まるにつれて、時には正式に招かれることもあったようです。CDも出して、店頭に並べられたこともありました。

 名前を確認しようとして資料を探したのですが、なかなか見つかりません。記憶では、なんとか・キャプランと言ったような気がします。(ジェームス・キャプランだったかな?当時は結構話題になったのですが、人の記憶なんて当てにならないものです)
 専門家筋では小馬鹿にしたような対応が大勢でしたが、ユング君は、アメリカの金持ちと言うのは粋なことをするもんだと感心したものです。まさに、彼は自らの生涯をかけて、この作品を愛しつづけたのです。

 マーラーは指揮者としては頂点を極めた人ですが、作曲家としてはそれほど認められることもなく世を去りました。彼は晩年、いつか自分の作品が認められる時代がくるはずだと信じてこの世を去りました。

 60年代にバーンスタインがNYOとの共同作業で完成させたマーラーの交響曲全集は、マーラー再評価への偉大な狼煙でした。
 彼は晩年にもうひとつの全集を完成させていますが、マーラーの福音を世につたえんとの気概に燃えた旧全集は今もその価値は失っていないと思います。 
 それ以後、CDの登場によって、マーラーは一躍クラシック音楽の表舞台に飛び出し、マーラーブームだといわれました。
 今ではもはやブームではなく、クラシック音楽のコンサートにはなくてはならないスタンダードなプログラムとして定着しています。
 
 まさに彼が語ったように、「巨人」の「復活」です。

ワルターワールド全開の演奏


マーラー演奏の歴史を振り返ってみると、この録音が持つ意味はとてつもなく大きかったことに気づきます。
私の手元に、「作曲家別洋楽レコード総目録」というレコード芸術の付録が何冊かあります。(著作権法が「改悪」されて、隣接権の起算点が『録音』から『発売』に変更されたために、少なくとも日本に於ける初出年を確認するために古本屋さんのサイトを検索しまくって探し出した書籍です。)この総目録の中から60年代初頭の何冊かパラパラっと見てみると、マーラーの交響曲なんてほとんど存在しないことがわかります。
たとえば、62年7月の総目録を見てみると、全曲収録されている交響曲の録音はたったの5種類です。

交響曲第1番
・ワルター指揮 ニューヨーク・フィル
・クーベリック指揮 ウィーン・フィル
交響曲第2番「復活」
・ワルター指揮 ニューヨーク・フィル(ここで紹介している録音)
交響曲第4番
・ライナー指揮 シカゴ交響楽団
・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィル

ちなみに、61年の総目録を見ると、シェルヘンによる1番・2番・5番・7番の録音が掲載されていて異彩を放っていますが、62年の目録では姿を消しています。

つまり、声楽を伴った巨大な交響曲を真っ正面から取り上げて、それを今日の基準からいっても十分に聞くに値するレベルにまで仕上げている演奏はこれが初めてなのです。ですから、巨大でゴテゴテした訳のわからない音楽と思われていたマーラーの交響曲の本当の姿を、多くの人はこの録音によって知ることになったのです。
今さら言うまでもないことですが、ワルターの師はマーラーでした。ですから、ワルターは師の音楽を多くの人に理解してもらうために涙ぐましい努力を積み重ねてきました。
体調を崩して現役を引退したワルターが、もう一度コロンビア交響楽団を率いて録音活動に復活したことはよく知られていますが、この「復活」の演奏は、それに先だって、ワルターと長年親密な関係にあったニューヨーク・フィルとのコンビで「ステレオ録音」されたものです。
ワルターが復活した原因としてCBSが提示した「破格のギャラ」がよく話題になりますが、意外とこの作品をスタジオ録音することをCBSがOKしたことも大きな要因ではなかったのかとわたしは睨んでいます。

ですから、この録音を聞くと、「わかりやすく、多くの人に親しんでもらおう」というワルターの意図が透けて見えるような気がします。
これもまたよく知られた話ですが、ワルターはマーラーが事細かにスコアに書き込んだ指示をあまり忠実には守っていません。もちろん、私もスコアを片手に調べたわけではないのですが、それでもマーラーの音楽に特徴的な「エグさ」みたいなものが綺麗に丸め込まれているのは耳で聞くだけでも簡単に確認できます。
おそらく、そういう微温的な解釈が現在の耳からすれば物足りなく思える部分であることは事実です。

しかし、そいう不満も、最終楽章にいたって吹っ飛んでしまいます。
とりわけ、中間部で合唱が入ってくる部分の素晴らしさは特筆もので、ここを聞く度に鳥肌がたちます。そして、その後はワルターワールド全開の圧倒的な世界が展開されます。もっと踏み込んでくれてもいいのにな!などという今までの不満はここで全て解消してしまい、「やっぱり、復活はワルターだ!」と納得してしまうのです。

これが未だに「現役盤」であるのにはやはり理由があるのです。

よせられたコメント

2010-06-14:うすかげよういちろう


2010-06-14:387番


2010-06-16:ヨシ様


2010-06-26:onod


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