クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲 ト短調 作品33

(P)フィルクスニー ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1954年4月9&11日録音





Dvorak:ピアノ協奏曲 ト短調 作品33 「第1楽章」

Dvorak:ピアノ協奏曲 ト短調 作品33 「第2楽章」

Dvorak:ピアノ協奏曲 ト短調 作品33 「第3楽章」


ボヘミヤの森や草原をさまよい歩いているような心持ちにさせてくれる作品

ドヴォルザークはその生涯に協奏曲を3曲残しています。と言うよりは、「3曲しか残していません」という方が正しいのかもしれません。何しろ、彼は決して寡作な作曲家ではなく、どちらかと言えば実に勤勉なタイプの作曲家でした。ですから、どの分野においてもたくさんの作品を残しているのですが、何故か協奏曲だけは3曲です。それも、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための作品を一つずつという慎ましさです。
そんな中にあって、このピアノのための協奏曲はもっともマイナーで日の当たらない作品だと言えます。以前に、ヴァイオリン協奏曲を紹介したときに「同じ協奏曲でもチェロの方はドヴォルザークと言うよりもクラシック音楽を代表するほどの有名作品であるのに、こちらのヴァイオリン協奏曲の方は実にマイナーな存在なのです。」と述べたのですが、そのヴァイオリンのための作品よりも、さらに一段も二段もマイナーです。何しろ、あの音楽之友社の作曲家別名曲ライブラリーのドヴォルザーク編にも取り上げられていないほどにマイナーなのです。(^^;

冒頭の部分を聞き始めると、あれ?これって初期の交響曲?と勘違いするような雰囲気で始まります。しかし、しばらくすると、おずおずと、実に慎ましくピアノが登場します。まあ、最初はそんな風に入ってきても、その内にオケと張り合ってガンガンやるんだろうと思っていると、何だか最後までおとなしいままで終わってしまいます。あれれ?おかしいなと思いつつも第2楽章にはいると、これは実にもってドヴォルザークらしい叙情性に溢れた音楽で、ピアノも実に慎ましく歌い上げていきます。ただし、この雰囲気は決して悪くないです。そして、最終楽章にはいるとリズミカルで軽快な雰囲気に変わるのですが、ピアノは依然として地味なままで、結局はそのままフィナーレをむかえてしまいます。
つまり、この協奏曲は、一般的なピアノ協奏曲に期待されるピアノの華やかさとはあまり縁がないのです。ですから、あのショーンバーグ先生も「ピアノ・パートが効果的に書かれているとは言いかねる」と述べざるを得ないのです。
しかし、そのショーンバーグ先生はその言葉に続けてこのようにも言っています。
「ピアノ・パートが効果的に書かれているとは言いかねるも、魅力的なピアノ協奏曲だ。」
そうなんです。この作品の至るところに、さすがはドヴォルザークと思わせるような素敵なメロディがふんだんに登場するのです。
確かにピアノの華やかな名人芸はありません。作品全体の構成もそれほどキチンとしたものがあるわけでなく、悪く言えば何ともとりとめもない音楽です。
しかし、この音楽にはボヘミヤの森や草原をさまよい歩いているような心持ちにさせてくれる魅力に溢れています。そう、何の目的もなく、森や草原、川の畔をさまよい歩き、おのれのココロを伸びやかに解放していくような「逍遙」の喜びがあります。そして、その喜びは、音楽的にはもっともとりとめがないように思われる第2楽章にもっとも色濃く溢れています。

独墺系のフォルム感に裏打ちされた構築物としての音楽も良いのですが、たまにはそう言う息苦しさから抜け出して、こういう音楽でリラックスするのも良いのではないでしょうか。

フィルクスニー独自の版による演奏


ドヴォルザークのピアノ協奏曲は長い間軽視され続けてきましたし、今もなお軽視されています。
理由は、そのピアノパートにあります。ピアノ協奏曲で、その主役たるピアノのパートにあまりにも問題がある(まるで2つの右手のために書かれている!!)というのでは、ピアニストとしてはあまり取り上げたくない代物であることは事実です。
しかし、それでも忘れ去るにはあまりにも惜しい魅力を持っていることも事実です。

そこで、登場したのがヴィレーム・クルツなるピアニストです。
彼は、問題があるなら、問題がないようにピアノパートをなおせばいいと考えたのです。原典尊重が金科玉条の現在においては「神をも恐れぬ所業」ですが、昔はこういう事はよくやらました。そして、クルツが良心的だったのは、オケには一切変更は加えず、ピアノパートのみを変更したことと、そのピアノパートも原典版と自分の版をともに印刷させて、どちらを選ぶかはソリストにゆだねた事です。
そして、このクルツの弟子だったのが、ここで紹介しているフィルクスニーで、彼は師のクルツ版にさらに手を加えて独自の版を作りました。まあ、この辺の詳しい話はスコアを持っていないのであまり確かなことは言えないのですが、原典版を使ったリヒテルさんの演奏と比べると、ピアノはかなり華やかに響いていることは間違いありません。それでいながら、原曲が持っているボヘミヤの土の香りみたいなものも失っていません。
オケはセル&クリーブランドなんですから何の問題もありません。
原典版でないと許せない!と言う心の狭い人には不向きですが、録音に恵まれないこの作品の一つのスタンダードとなりうる演奏です

よせられたコメント

2009-12-13:戸田


2014-07-07:nakamoto


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