クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26

(Vn)ティボール・ヴァルガ:J.M.オーバーソン指揮 ティボール・ヴァルガ音楽祭管弦楽団 1965年録音





Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [1.Vorspiel: Allegro moderato]

Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [2.Adagio]

Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [3.Finale: Allegro energico]


ブルッフについて

今日ではヴァイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲、そしてコル・ニドライぐらいしか演奏される機会のない人です。ただし、ヴァイオリニストにとってはこの協奏曲はある種の思い入れのある作品のようです。
と言うのは、ヴァイオリンのレッスンをはじめると必ずと言っていいほど取り上げるのがこの協奏曲であり、発表会などでは一度は演奏した経験を持っているからだそうです。ただし、プロのコンサートで演奏される機会は決して多くはありません。
しかし、ロマン派の協奏曲らしくメランコリックでありながら結構ゴージャスな雰囲気もただよい、メンデルスゾーンの協奏曲と比べてもそれほど遜色はないように思います。

第1楽章
序奏に続いて独奏ヴァイオリンの自由なカデンツァが始まるのですが、最低音Gから一気に駆け上がっていくので聴き応え満点、けれん味たっぷりのオープニングです。力強い第一主題と優美な第二主題が展開されながら音楽は進んでいき、いわゆる再現部にはいるところでそれは省略して経過的なフレーズで静かに第2楽章に入っていくという構成になっています。(・・・と、思います^^;)

第2楽章
ここが一番魅力的な楽章でしょう。主に3つの美しいメロディが組み合わされて音楽は展開していきます。息の長い優美なフレーズにいつまでも浸っていたいと思わせるような音楽です。

第3楽章
序奏に続いて,独奏ヴァイオリンが勇壮なメロディを聞かせてくれてこの楽章はスタートします。。前の楽章の対照的な出だしを持ってくるのは定番、そして、展開部・再現部と続いてプレストのコーダで壮麗に終わるというおきまりのエンディングですが良くできています。

上手下手などと言うレベルをはるかに超えたところで成り立っている音楽


ヴァルガという人はソリストとしての「キャリア」からは降りてしまった人なので、録音に関するクレジットなどがそれほど詳細には残っていないのが困りものです。
このブルッフの協奏曲もそう言う「はっきりしない」録音の一つです。

まず指揮者ですが、Concert Hallからリリースされたレコードには「ハインツ・ワルベルグ」と記されているのですが、これは誤りのようです。このブルッフの方もチャイコフスキーと同じく「J.M.オーバーソン」が指揮をしていたようです。
また、オーケストラもConcert Hallのレコードには「Vienna Festival Orchestra(ウィーン祝祭管弦楽団)」と記されています。もちろん、このオケの実態は「Orchestre du Festival Tibor Varga Sion(ティボール・ヴァルガ音楽祭管弦楽団)」です。

おそらく、レーベルにしてみれば「Orchestre du Festival Tibor Varga Sion」では商売にならないと思って、「ウィーン・ブランド」の御利益に与ろうとして「Vienna Festival Orchestra」という名前をでっち上げたのでしょう。
「キャリア」を捨てるというのは自由と引き替えにそう言う扱いを受けると言うことなのです。

ただし、そう言う知名度の低さと音楽のクオリティの間には何の関連性もありません。
おそらく、この録音に際しても、ティボール・ヴァルガの意志はオーケストラの隅々にまで行き渡っています。来歴などは一切分からない「J.M.オーバーソン」という指揮者は間違いなくヴァルガの影武者です。

なぜならば、オーケストラの響きはこの作品の一般的な常識をはるかに超えているからです。
このブルッフによるコンチェルトは、ロマン派の時代に一世を風靡した典型的なヴィルトゥオーソ・コンチェルトです。主役はどこまで行ってもソロ楽器であり、オーケストラはそのソロ楽器の魅力を引き立てる伴奏に徹します。
ですから、時にはオレが主役だと言わんばかりにここまでオーケストラが分厚く、そして豪快に鳴り響くと言うことなどはあり得ないのです。

何しろ、ソリストはティボール・ヴァルガという偉いヴァイオリニストであり、指揮者は来歴もはっきりしないような人なのですから、普通は伴奏に徹するものです。
しかし、オケのメンバーはあちこちで俺たちの出番が来たと言わんばかりに弾きまくっているのです。そして、それをヴァルガもニコニコしながら眺めている風情が伝わってきて、ソロ楽器に主役が帰ってきたときには、その教え子達のがんばりに答えるべく、そのさらに上を行くような演奏を展開しているのです。

そして、こういう演奏というのは「キャリア」を降りないと実現できないことに気付かされます。
飛行機に乗ってやってきたソリストが指揮者と簡単な打ち合わせをして、そしてオーケストラと数回リハーサルをこなしただけでは絶対に実現できない音楽なのです。

おそらく、この演奏と録音には、とんでもなく効率の悪い「手間」がかけられているはずです。全てのメンバーが寝食をともにし、その中でヴァルガの理想とする音楽の形を全てのメンバーが学び取ることを通して実現した音楽です。
ですから、そこには上手下手などと言うレベルをはるかに超えたところで成り立っている音楽が存在しているのです。

なお、チャイコフスキーのページで「僅か10歳でブダペスト音楽院に入学してフバイに学び」と書いたのはいささか正確さに欠いた表現だったようです。
ヴァルガがフバイの勧めで音楽院に入学したのは事実であり、彼から多くのことを学んだことは間違いなのですが、ヴァルガがフバイのクラスにはいることを許される年齢に達したときにはフバイは既に亡くなっていたのです。
ですから、「ブダペスト音楽院に入学してフバイに学びというのは正確さに欠ける記述でした。

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