クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~

コレッリ:合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調

ソチエタ・コレルリ合奏団 1952年録音



Corelli:Concerto Grosso No.7 in D major OP.6


合奏協奏曲を完成に導いた作品群

16世紀の初頭に突如として登場したのにも関わらず、その時点でほぼ完成形に近い形をしていたこと、さらには、17世紀にはいるとストラディバリやグァルネリなどの一族が登場してほぼ頂点を極めてしまったことです。
それは、長い年月をかけて改良が加えられ、その完成形を得るまでに大変な苦労が必要だったピアノと比べれば対照的です。

ですから、その演奏に関する技法も基本的な部分は早い時期にほぼ完成してしまい、その集大成としてコレッリの手になるヴァイオリン・ソナタ集が登場します。そして、そう言う教則本的なレベルをこえて、さらに華やか演奏効果を持った音楽を作りたいと言うことで登場したのが「合奏協奏曲」と呼ばれる形式でした。

「合奏協奏曲」とは、独奏楽器群(コンチェルティーノ)とオーケストラの総奏(リピエーノ)に分かれ、2群が交代しながら演奏する楽曲のこと・・・らしいです。
これに対して、一人の独奏楽器の奏者にオーケストラの総奏が対峙するのが通常の「協奏曲」で、「合奏協奏曲」との区別を明確にするために「独奏協奏曲」なんて言う言い方をします。(「独奏協奏曲」なんて言う言葉はほとんど使われなくなりましたが・・・)

ちなみに、この「合奏協奏曲」の形を完成形に導いたのがここで取り上げているコレッリで、「独奏協奏曲」をを完成形に導いたのがヴィヴァルディの「四季」です。

コレッリの「合奏協奏曲」は弦楽アンサンブルで演奏されます。
独奏部分を受け持つ「コンチェルティーノ」は2本のヴァイオリンと1本のチェロによって構成されるるのが基本です。

この形式はヘンデルによってさらに拡大され、「リピエーノ」に管楽器が導入されることでより華やかさを増していきます。
そして、バッハの「ブランデンブルグ協奏曲」も3番と6番以外は概ね合奏協奏曲の形式で書かれています。

比べてみれば、弦楽器だけで演奏されるコレッリの作品にはヘンデルやバッハのような華やかさにはかけますが、弦楽器特有の横へ流れていく旋律線の美しさは群を抜いています。

それは、12曲の合奏協奏曲の中でもっとも有名な第8番「クリスマス協奏曲」だけの特徴ではありません。弦楽器アンサンブルが作り出す優美で、時にはメランコリックな旋律線の美しさは全12曲にあふれています。
バロック音楽と言えば、バッハかヘンデル、もしくはヴィヴァルディにとどまってしまうことが多いのですが、もう少し視野を広げればこういう美しい音楽もあるのです。

合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調


  1. 合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調 第1楽章 - Vivace - Allegro

  2. 合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調 第2楽章 - Adagio

  3. 合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調 第3楽章 - Allegro

  4. 合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調 第4楽章 - Andante Largo

  5. 合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調 第5楽章 - Allegro

  6. 合奏協奏曲 作品6 第7番 ニ長調 第6楽章 - Vivace



本質に迫ろうとする真摯な演奏


T1952年に「The Corelli Tri-Centenary String Orchestra」によって録音された演奏です。
ところが、この「The Corelli Tri-Centenary String Orchestra」という団体が分からない。分からないどころか、「The Corelli Tri-Centenary String Orchestra」の読み方すらも怪しい。

古い資料(作曲家別・洋楽レコード総目録)を調べてみると「ソチエタ・コレルリ合奏団」という団体によって録音されたコレッリの合奏協奏曲が60年代の初め頃に発売されていることが分かりました。そして、あちこち調べ回って、どうやら「The Corelli Tri-Centenary String Orchestra」=「ソチエタ・コレルリ合奏団」と言うことが分かりました。
さらに調べてみると、この団体はヴィヴァルディの四季なんかも録音していて、メンバー構成もイ・ムジチ合奏団と全く同じ12名の弦楽器奏者で構成されていることも分かりました。

なーんだ、イ・ムジチが売れたので、その二番煎じで柳の下の泥鰌を狙った団体か・・・などと思ったのですが、これが大間違い!!
なんと、この「ソチエタ・コレルリ合奏団」はイ・ムジチよりも一足早く1951年に結成されているのです。つまりは、二番煎じはイ・ムジチの方だったのです。

そして、肝心の演奏の方を聞いて、さらに驚いてしまいました。
ここには、あのイ・ムジチの甘い雰囲気などは微塵も存在しません。
かつて、イ・ムジチの四季を「アルプスの南側の演奏」、ミュンヒンガーの「四季」を「アルプスの北側の演奏」と呼んだのですが、何もアルプスを越えなくてもイタリアのど真ん中にザッハリヒカイトなバロック音楽が存在したのです。

ここには、聞き手に媚びる甘さは何処を探しても存在しません。
あるのは、スコアだけを頼りに、作品が持つ本質に真摯に迫ろうとする気迫だけです。残念ながら、私はまだ聞く機会を持たないのですが、ネット情報によると、この団体による「四季」は聞いていて「辛くなる」ほどの厳しさに貫かれているそうです。
是非とも、探し当てて聞いてみたいものです。

しかし、残念なことに、この厳しさは多くの聞き手から好意を持って受け入れられることはなかったようです。
イ・ムジチの「四季」が登場してからは、バロック音楽の世界はイ・ムジチの「甘さ」が席巻することになります。
結果として、このような真摯な演奏を展開した「ソチエタ・コレルリ合奏団」は10年あまりの活動で解散してしまうことになります。そして、バロック音楽からそう言う甘さを払拭するためにはピリオド楽器によるムーブメントを待つしかなかったのです。

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