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モーツァルト:3つのドイツ舞曲, K.605

コリン・デイヴィス指揮:フィルハーモニア管弦楽団 1959年5月21日~22日録音



Mozert:3 German Dances, K.605 [1.No.1 in D major]

Mozert:3 German Dances, K.605 [2.No.2 in G major]

Mozert:3 German Dances, K.605 [3.No.3 in C major "Die Schlittenfahrt"]


モーツァルトを聴く上では決して見逃してはいけないジャンル

モーツァルトにとって舞曲は彼がはじめた学んだ音楽形式でした。そして、彼の作品群の中では控えめな位置にあるのですが、それは常に彼とともにありました。
しかし、モーツァルトの生涯を俯瞰したときに、それは大きく3つの時期に区切られるようです。
まず最初は、ザルツブルグ時代の諸々の行事のために書かれた作品です。それは、簡素な楽器編成によって書かれた彼の少年期、青年期の作品です。

それに続く2つめのグループはバレエやオペラのために書かれた作品です。
そして、この分野に於いて最も重要なのが、彼がウィーンに移り住んでから書かれた有名な舞踏会場であるレドゥーテンザールの為に作曲された作品群です。レドゥーテンザールは皇帝主宰の舞踏会も行われる会場であり、それ故にモーツァルトが宮廷作曲家としての地位を得たために生まれたものでした。
それだけに、モーツァルトは小品であるにもかかわらず、そこには彼が持つあらゆる技術が駆使されていて、とりわけ精妙なオーケストラの響きには注目すべきものがあります。

それだけに、モーツァルトを聴く上では決して見逃してはいけないジャンルだと言えます。

モーツァルト:3つのドイツ舞曲K.605


2本のポストホルンと鈴を使った音楽で一般的に「橇すべり」として知られています。この鈴とポストホルンを流しながら行う「橇すべり」は当時の宮廷で流行していた遊びでした。
モーツァルトはそう言う「受け」を狙いながらも、オーストリアの民謡を巧みに取り入れて、「橇すべり」らしいどこかドイツの田舎風の快活な音楽にしあげています。


コリン・デイヴィスの「最初の一歩」を知ることができる録音

80を超えた後も元気に活躍していたコリン・デイヴィスの「最初の一歩」を知ることができるという意味でも、なかなかに興味深い録音だと言えるのではないでしょうか。そして、そう言う「位置づけ」の指揮者の録音もパブリックドメインの仲間入りをしてきたことに、ある種の感慨を感じずにはおれません。
さらにつけ加えれば、コリン・デイヴィスと言えば、私の中ではボストン交響楽団とのコンビで素晴らしいシベリウスの交響曲全集を完成させた人と言うことでインプットされています。

しかしながら、こういう認知の仕方は極めて個人的に偏ったものであって、一般的にはモーツァルトやベルリオーズのスペシャリストとして認められ、さらに言えばイギリスの数少ない作曲家の一人であるマイケル・ティペットの擁護者として知られています。しかしながら、私のCDの棚を眺め回してみても、恥ずかしながら彼のベルリオーズやティペットの録音はほとんど見あたりません。それと比べて、シベリウスに関してはロンドン響との全集も並んでいるのですから、どうにもこうにも、私の中でのデイヴィスはシベリウス指揮者と言うことになってしまっているようです。
つまりは、どう考えても、私はコリン・デイヴィスのよい聞き手ではないと言うことです。

しかしながら、今回、彼の若い時期の録音、とりわけ彼が最も得意としたモーツァルトの録音を聞いてみて、その基本的な音の作り方はシベリウスと大きく変わらないなと言うことは確認できました。
デイヴィスが作り出す音楽の最大の特徴は、その音色がシルクの手触りを思わせるようなトーンを持っていることです。特に、70年代の後半に、ボストン交響楽団とのコンビで完成させた全集の響きは素晴らしくて、未だにそのLPレコードを後生大事に保存しているほどです。

コリン・デイヴィスと言えば、貧しい家庭に育ったためにピアノを買うことができず、そのために最も値段の安かったクラリネットで音楽の学習を開始したという話は有名です。そして、ピアノの演奏能力に問題があったために音楽大学では指揮法の履修を断られたという話も、これまた知る人ぞ知る有名なエピソードです。
しかしながら、そう言う境遇にもめげずに、自分たちの仲間内でオケを作って指揮活動を始め、そして、ついにはクレンペラーが病気でキャンセルしたとき(1959年)に、その代役として「ドン・ジョヴァンニ」を指揮して大成功を収めと言う話も、これまた有名です。

今回紹介した一連の録音(1959年~1960年)は、その成功によって急遽計画されたものではないかと思われます。録音は全てモーツァルトの作品なのですが、それは「ドン・ジョヴァンニ」(コンサート形式)の成功によって注目されたことを考えれば、商業的にはそうならざるを得なかったのでしょう。
しかし、「シンフォニア・オブ・ロンドン」というスタジオ録音を専門とするオケであっても、弦楽器の歌わせ方のうまさは充分に感じ取ることができます。もちろん、後年のボストン響のようなふくよかさと透明感が絶妙にマッチしたシルキーな響きとはいきませんが、それでも充分すぎるほどの透明感のある美しさは実現しています。
また、デイヴィスと言えば、手堅く正統派の音楽作りをするというイメージがあるのですが、これなどを聞くと、意外とあざとい表現なども垣間見られて面白いです。

80を超えた後も元気に活躍していたコリン・デイヴィスの「最初の一歩」を知ることができるという意味でも、なかなかに興味深い録音だと言えるのではないでしょうか。

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